■王とメイドの切ない恋物語■
木登りしたり、泥だんごつくったり、かくれんぼしたり、いっぱい、いっぱい遊んだ。

夕方になって、丘から村を見下ろす。村全体がオレンジに染まっていた。

「きれいだね」

私が呟くと

「うん。今まで見た景色で1番きれいだ」

まーくんは、笑った。しばらく2人で夕焼けを見つめた。


少し暗くなってきたので、

「そろそろお家に帰ろうか?」

と、まーくんに言うと、まーくんは悲しそうな顔をした。


「どうしたの?帰りたくないの?」

「うん」


まーくんは、下を向いた。

涙をぐっと、こらえているみたいだった。

私は、まーくんに、そっと近づき、お母さんがいつもやってくれるように、まーくんの頭をナデナデした。



まーくんは、少し安心したのか、ぽつり、ぽつりと、話しはじめた。

「あのね、すごく、すごく悲しいことがあったの。僕が泣いていたら、人前で泣いたりしちゃだめだって言われたの。立派な大人になりたいなら、泣くのは1人の時だけにしなさいって」


そんな…。悲しかったら、リリアも涙で出ちゃうよ。


「ダメって言われたんだけど、すごく、すごく悲しくて、涙がまんできなくて、飛び出してきちゃったの」


そう言って、まーくんは涙がこぼれないように、夕焼けの空を見上げた。


私は、そんなまーくんを、見ていられなくなって、ぎゅーっと抱き締めた。

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