【短】エリュシオン
まだ、エンドロールは流れていた。
壮大な音楽が鳴り響き、席を立つ人は、まばらになった。

彼も余韻に浸っているのか、私に席を立つようにとは言わなった。


だから、私もゆっくりとその場にいることにした。


すると、音楽に遠慮するかのように、


「美緒さん、大丈夫?」


とこそこそと耳にこそばゆい低い声…。
私は思わず変な声が出そうになり、咄嗟に口元に手をやって、コクコクと頷いた。


本当に、心が痛い。


その痛みが、ときめきなのか罪悪感からくるものなのか、分からない……。


結局、私はそれ以上、画面を見るわけでも音楽に耳を傾けるわけでもなく、ただただ隣にいる彼の、少し当たった腕の辺りの温もりを感じていた。
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