記憶の糸。
それに近寄った敵軍の格好をした2人は、手を合わせるとどこかへと去っていった。

私は、しばらくそれを見つめてから倒れている2人に近寄る。

「義也様!友晴!」

「……春、枝……」

うっすらと目を開けた義也様は、ゆっくりと春枝さんの名前を呼んだ。

「……春枝に……会えて……私は、幸せ……っだった……大、好き……だ」

それだけ言うと、義也様は目を閉じる。

「義也様!友晴!!」

私の目からは、涙が溢れた。春枝さんの感情を表すかのように。

次の瞬間、私の目の前は真っ暗になった。



私は、ゆっくりと目を開ける。見えたのは、いつもの天井。……戻ってこれた。

体を起こして、私はさっきまでのことを思い出す。まだ胸が苦しくて、仕方がないんだ。

春枝さんは、目の前で大切な人を亡くして……そっか……だから、胸が苦しくなったんだ……。多分、良く見たあの夢は、義也様を亡くしてからの春枝さんの夢だ……。

私は、もう一度泣き崩れることしか出来なかった。
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