記憶の糸。
「ちょっと待って!何で、あなたは私のことを?眠ってる私はどうなるの?」

『心配いりません。ここで過ごした一日は、向こうでは1時間。向こうに戻る時のは、あと向こうでいう30分くらい、でしょうか?』

そう言って、微笑んだ春枝さんは口を開く。

『あなたを知っている理由はですね。私は、ずっとあなたの中で眠っていたのです……理由は、分かりませんが……それでは』

口を閉じた春枝さんは、姿を消した。……30分……ってことは、あと12時間くらいか。

「……ふぅ」

私は1つため息をつくと、布団に横になる。春枝さんの話を聞いて、少しは安心した。

そして、私はゆっくりと目を閉じた。



朝早く。私は、春枝さんの子どもである友晴を見送りに外に出た。

友晴と義也様は、鎧と兜を付けた状態で馬に跨っている。2人は、今から戦に行くんだって。

「友晴よ……私と友晴だけは、別の場所で合流することになっておる」

「はい!」

そんな会話をした後、義也様は私を見つめた。

「春枝……」

「……義也様。行ってしまうのですね」

「あぁ……すまぬ」

そう言った義也様は、馬を走らせる。友晴は「父上!?」と言いながら、義也様の後を追いかけるように馬を走らせた。

「……っ!?」

2人の姿を最後まで見送ろうと立っていると、突然義也様と友晴の体が崩れ落ちる。
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