小悪魔王子に見つかりました

「受験初日。私、始まる前に見てたプリントで指切っちゃって。絆創膏持ってなくてどうしようって会場のトイレで焦ってたら……」

羽芽ちゃんの話を聞きながら、受験の記憶が蘇ってくる。

────

『……どうしようっ、』

受験初日。
試験開始前。

トイレから出て手を洗っているとき、隣からボソッと聞こえた、か細い声。

横目でチラッと見れば、そこには、白くて細い指から、血が出ているのが見えて。

彼女はテッシュで血を止めようと試行錯誤していた。

『もう始まっちゃうのにっ、』

今にも泣き出しそうなその声を聞いて、迷うことなんてなかった。

『これ、使ってくださいっ!』

制服の内ポケットに入れていた絆創膏を取り出して、彼女の立つ手洗い場の前に置いて、急いでその場を後にした。
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