イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
守衛さんは持ち場に戻りエントランスには私と親子の3人。
恐らくこの人は私の事を知らないだろう。
平常心、平常心。
心の中で自分に言い聞かせた。
「私、神谷の秘書で鴨居と申します。神谷は間も無く戻ると思うの——」
ですがと言おうとした時だった。
「すみません。この子が高熱を出して」
「え?」
てっきり眠っていると思っていたら、寝ているのではなく、ぐったりしていたのだ。
「病院に行こうと思ったんですが、診察時間が過ぎてて……」
女性は狼狽えていた。
「あの、とりあえずお子さんをそっちの長椅子に寝かせましょう」
「は、はい」
エントランスの窓側に子供が寝れるぐらいの長椅子があった。
そこに寝かせると、私は女性に「おでこ触らせてください」と断ってからおでこに手を当てた。
「すごい熱ですね」
私でもわかるほどだった。
「朝から元気がなくて……夕方から熱が上がり出して」
「咳はありますか? 頭が痛かったりとか」
女性は首を振った。
たしか救急病院がここから車で10分ぐらいのところに……。
こんな高熱の子をこのままにしていつくるかわからない専務を待っていられない。
「あの、今から一緒に病院に行きましょう」
「え?」