イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
テーブルの上には梁で捕まえた鮎がフライと塩焼き、それにご飯とお味噌汁が置かれた。

「おいしそう〜。修平さん食べましょ〜」

 声をかけると専務がクスクスと笑い出した。

「あの?」

「いや、さっきまで『ドキドキしてます』って顔を赤らめていたのに料理が来た途端食べる気満々になって……見てて飽きないなって思ったんだ」

「だって、おいしそうじゃないですか。それに自分で掴んだ魚ですよ」

確かに専務の言う通りかもしれないが、本音をいえばそのドキドキを隠すための演技。
でもうまくごまかせたかな。
だけどここで一つ問題が。
実は私って焼き魚を上手に食べられないのだ。
うまく骨をとって綺麗に食べる人がいるが、多分そう言う人から見たら私の食べ方は魚に失礼な部類に入る。
だから人と食事をするときはなるべく焼き魚は避けて、骨取りしなくてもいいものを選ぶ。
だけど今日は回避できなかった。
私にとって目の前の鮎の塩焼きはかなり手強そうだ。
とりあえず先にフライに手を付ける。
鮎自体そんなに食べたことはないけれど、あっさりしいる。
塩焼きもきっとおいしいにきまっているし、早く食べないと身が硬くなってしまう。
だけど、どうしても魚の食べ方に自信がない私躊躇するように、箸をのばせない。

「やっぱり獲れたての魚はおいしいな」

「はい美味しいです」

「この塩焼きも塩加減が絶妙で美味しいよ」

早く食べろと促している。
専務の塩焼きはすでに綺麗に骨だけが残っていた。
どうしよう。あんなに上手に食べられない。
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