契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 そして翌朝、目覚めた晴香が目にしたのはいつも通りの孝也だった。
 少し寝坊した晴香をからかい、朝ごはんをおいしそうに食べる姿は、前日の出来事などなかったのではないかと思うほどに元どおり。
 その姿に、どうしてもこの結婚を維持するのだという彼の堅い決意を晴香は見た。こんなことではダメにならないと叫ぶように言った彼の決意を。
 晴香も、その彼の意思に沿うように元どおりの態度で応じた。
 晴香は、彼が望む疑似恋愛行為には応じることはできなかった。でもだからこそ、せめて形だけの妻としての役割は果たしたくて。
 そして、表面上は平穏な日々が戻った。
 孝也はあいかわらず晴香に優しかった。忙しい孝也のために晴香がする家事ひとつひとつにお礼を言い、「でも無理はしないで」と付け加える。朝起きるのが苦手な晴香に代わって朝ごはんを作って起こしてくれることもあるくらいだった。
 本当に、どこからどう見ても完璧な夫。
 でも時々こんな風にして、彼の何気ない仕草から、今までとは違うのだということを思い知らされる。
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