契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 二年前に彼が晴香の会社に来てからは、少し距離を置くようになったのだけど…。
 その彼が今は本当の家族なのだ。
 でも心は、むしろあの頃よりも遠く離れてしまったと晴香は思う。写真の中の孝也をジッと見つめて晴香は小さくため息をついた。
 そんな晴香の気持ちを他所に、健太郎と美紀が次々にアルバムを開いて盛り上がっている。

「うわー! 中学生の久我君、なんかかわいい。あの頃は王子様なんて言われて騒がれてたけど、今から見るとかわいいよね」

 健太郎がその写真を覗き込んで頷いた。

「この頃から本格的にモテだしたんだなあいつ」

 そうなのか、と晴香は思う。
 でも晴香自身は学年がひとつ上だからだろうか、あまりピンとはこなかった。

「それでこれが、高校生っと…。この頃はもうすでに飛ぶ鳥を落とす勢いだったな」

 健太郎が美紀に同意を求める。そしてやや大げさにため息をついてみせた。

「マジでこいつには色々迷惑かけられたよ」

 健太郎の言葉に晴香は引っ掛かりを感じて首を傾げた。晴香の記憶が正しければ迷惑をかけられていたのはどちらかというと優等生タイプの孝也だったような。
 宿題を手伝わされたり、忘れ物を届けさせられたり。
 その晴香の疑問に答えたのは美紀だった。

「久我君はどっちかというとちょっとクールで、あまり女の子と仲良くなるタイプではありませんでしから、とっかかりとして親しみやすいけんちゃんに女の子が集中してたんです」
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