契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 健太郎は机に頬杖をついて、哀れむような目で晴香を見た。

「あいつがむちゃくちゃ忙しいの姉ちゃん知ってるだろう? 俺とだって、姉ちゃんみたいに頻繁には飲まないよ」

「同窓会も最後の方にチラッと顔をみせるだけです」

 美紀がにっこりとして頷いた。

「同窓会!」

 晴香はまたもや声をあげた。

「美紀ちゃん、同窓会で孝也が失恋したって言ったって言ってたじゃない。ほら、三年前くらいに。私孝也からなにも言われていないわ。だから…」

「三年前、姉ちゃん彼氏がいただろう」

 健太郎の言葉に、晴香は口を開いたまま、もう何も言えなくなった。
 頭の中は完全に混乱して、"でも"という言葉がぐるぐるとまわるだけだった。
 だって、まさかそんなこと全然思いもしなかった。孝也が晴香にずっと"姉"以上の気持ちを抱きながらそばにいたなんて。
 こりゃだめだとでも言わんばかりの健太郎、ほらねと微笑む美紀を唖然として見つめながら、晴香はプロポーズの時のことを思い出していた。
 あの時確かにふたりは"恋愛感情ぬきで結婚しよう"ということになったのだ。でもよく考えてみれば、『恋愛感情がない』と言ったのはどっちだった?
 晴香は「あ」と声を漏らして息を呑む。
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