契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 自分では確認できない場所にいったいなにをしたのかと少し不安に感じて晴香は彼に問いかける。
 孝也が嬉しそうに答えた。

「ここに、俺のしるしをつけたんだよ」

「しるしって…!? そ、そんなことしたら、髪を結べないじゃない!」

 なにをされたのかようやく気がついた晴香は、頬を染めて抗議する。
 振り返って孝也を睨むけれど、彼はまったく悪びれる様子はなかった。

「晴香、最近はあんまり髪を結ばないじゃないか。髪を下ろしていれば見えないよ」

 だからって何かの拍子に見えたりしたらどうするんだと思い晴香は頬を膨らませた。

「ぜ、全然、結ばないわけじゃないもん! 仕事中に…忙しいときなんかは邪魔になるからまとめることもあるのに…」

 でもそこまで言って、孝也の眉がぴくりと動いたことに気がついて、少し慌てて言い直した。

「そ、そんなにはないけど…」

「だったら尚更、好都合だ」

 孝也の瞳がきらりと光り慌てて逃げようとする晴香を抱き込んだ。そしてさっきと同じところへ再び唇を寄せる。

「たか…、ダメ…」

 甘い刺激がまたぴりりとうなじに走った。

「ほら、これでもう絶対に髪は結べない。港店のやつらに、晴香のここを見せるわけにはいかないからね」

 してやったりといった様子の孝也に晴香はちょっと呆れてしまう。
 すごく頼りになると思ったら、ちょっとしたことに子供みたいにこだわったり…。これからもずっと彼のこのふたつの顔に自分はどきどきさせられ続けるのかと思ったらちょっと先が思いやられる。

「仕事中なんだから、誰も孝也みたいな目で見てないのに…」

 独り言のような呟きを聞き咎めて、孝也が晴香をじろりと睨んだ。
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