契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 うなじにかかる孝也の息をくすぐったく思いながらも彼の口から語られる自分への想いに晴香は耳を傾けた。

「そのうちに諦めて、晴香を好きな自分を認められるようになったけど、どんなにアピールしても晴香全然気がつかなくて、あいかわらず俺は弟のままだし。でもたぶん言葉にしたら怖がって逃げちゃうなって思ったら…うかつに手は出せなくて、本当に八方塞がりだったよ」

 そう言って孝也は晴香のうなじに顔を埋めたまま、くっくと笑った。

「孝也…、ごめんね。全然気がつかなくて」

 家族みたいにそばにいる人によこしまな感情を抱いてしまったという罪悪感にも似た気持ちには晴香もつい最近苦しめられたばかりだ。
 こんな想いを彼は長い間ひとりで抱えていたのだと思うと、胸が締め付けられるような心地がした。
 どうして気がついてあげられなかったのだろう。

「すっごく長い片想いだったけど、今こうしていられるなら、それでいいよ。でも…」

 そこで言葉を切って、孝也が晴香のうなじに長い長いキスをする。

「んっ…」

 そこに感じる甘い痛みに、思わず声を漏らしそうになって、晴香はキュッと唇を噛む。
 少しして唇を離した孝也が、満足そうにくすりと笑った。

「ん、いい眺め」

 そしてそこをそっと撫でた。

「な、なにをしたの?」
< 186 / 206 >

この作品をシェア

pagetop