契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 そして今度は思いがけない事実に唖然とする晴香に向かって、言った。

「いざ転職してみたら、公私混同は良くないんて言って晴香があまり会ってくれなくなったのは誤算だったけど」

 そういえば、一緒にご飯を食べに行っていた頃そんな話をしたような。だとしても到底そんなこと納得はできなかった。

「だからって、そ、そんな理由で、そんな大事なこと決めたらダメじゃない!」

 晴香はつい強い口調で言ってしまう。でも本当にそうだと思う。
 東京で会った藤堂はいずれ役員にしたかったと言っていた。そうでなくても晴香が知らないだけで、彼にとってもっといい道があったかもしれないのに、晴香の不安を解消するためだけに、将来を決めてしまうなんて!
 だが孝也の方はひょいと肩をすくめるだけだった。そして、

「どうしてダメなの?」

と言った。

「え?」

「晴香の言う通り、うちはいい会社だったよ。地域の人たちに信頼されて、地域の人たちに支えられている。もはやこの街には欠かせない存在だ。それは大東社長を筆頭にここにいる社員が築き上げてきたものだろう? 俺、本当にこの会社に来てよかったと思ってるんだ。これからも、この会社でたくさんの人を幸せにしたい。お客様だけじゃなくて、社員たちも」

「孝也…」
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