契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 黒板には、今日来店される予定のお客様の名前、それから道ゆく人へのちょっとしたメッセージが書かれている。
 晴香はそれを店先に置くと、その周りに置かれているグリーンの枯れた部分を手で摘み取っていく。
 晴香が丹精込めて世話をしているグリーンはお客様にも営業マンたちにも評判だが、こう暑くては早々に枯れてしまうかもしれないと思い、晴香はまた小さくため息をついた。
 とはいえ、本格的に暑くなる前にと晴香はグリーンに水を差す。緑の葉っぱにキラキラと水がかかるのがなんとも涼しげだった。
 それを少し羨ましいなと思いながら晴香は、店舗の上部に掲げられたウッド調の看板を見上げる。
 一見するとカフェにも見えるおしゃれな外観の店舗と看板、でもここはカフェでもレストランでもなく、さらにいえば美容室でもない。
 県内一の売り上げ実績を誇る不動産会社『セントラルホーム』の店舗だ。
 三カ月前に改装したばかりの、ここ港店は内装もカフェのように明るくておしゃれだ。
 入口に向かって右側が新築物件のお客様のためのスペースで、反対側が中古物件の紹介コーナー、中央には柔らかいマットを敷き詰めたキッズコーナーがある。
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