契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 男性は恋愛感情がなくてもそういう行為はできるというのは聞いたことがある。恋愛感情なしのお友達婚を提案するくらいなのだからきっと孝也にはその自信があるのだろう。
 では、自分は?
 晴香は自分自身に問いかけてみる。
 恋愛感情がない相手とそういうことができるのだろうか。
 …答えは、否だった。
 たとえ子作りのためだからと言われても、全然好きでもない相手とそういう行為を割り切ってできる自信はまったくない。
 晴香は両親と楽しげに話す孝也の横顔を見つめながら、もう一度自分に問いかける。
 では、…孝也とは?
 その瞬間、晴香の脳裏に今朝自分の部屋で孝也に触れられたときに感じたあの衝動が蘇る。また、身体が熱くなった。触れられている右手から、熱を含んだ痺れが晴香全身に広がって…。

「…か、晴香?」

 呼びかけられて、晴香はハッとする。晴香以外の三人が不思議そうに晴香を見ていた。

「どうしたの? 大丈夫?」

 孝也の母に尋ねられて、晴香は慌てて首を振った。

「な、なんでもないです。大丈夫」

「そう。なら孝也の言う通りでいいのね?」

 良からぬことを考えて身体を火照らせてしまったことに罪悪感を感じながら、わけがわからないまま晴香は答える。

「え? …あ、はい。それで大丈夫です」

 孝也の母がにっこりとして頷いた。

「ならよかった、早速書かせてもらうわね。婚姻届の保証人欄」
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