ふたつの羽根

エンジンを切り「ちょっと来て」と言って車のドアを開ける。

あたしは深くシートに付けていた背を離し、ドアを開けて地面に足をつける。


山の中なのか立ち上がった瞬間ヒヤッとした冷たい風が全身を震わせる。

腕を両手で擦るあたしを見た陸は「あっ…」と声を漏らし、再び車のドアを開け車内に上半身だけ入れる。


バンッ…

と車のドアが閉まる音がして、陸はあたしの所まで駆け寄り手に持っているものをあたしの肩にフワッとかけた。  


「これ着とけ」


その肩に目線を落としかけられた物を見る。

…パーカー


あたしの顔から笑みが漏れ「ありがとう」と呟いて袖に腕を通す。


「風邪ひいて俺のせいにされたら困るしな」


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