ふたつの羽根
あたしは急いでベンチの所まで駆け寄り、前の手すりにしがみ付いて上半身を手すりから投げ出す。
目に飛び込んできたのは、とてつもなく綺麗な街の光だった。
一瞬でも瞬きをすると勿体ないんじゃないかと思うほどだった。
「綺麗だろ」
陸は手すりに両腕を置き、腕を絡める。
そして空に向かって息をフーっと吐き「里奈に見せたかった」と声を漏らす。
「あたし?」
首を傾げるあたしに「そう、里奈に…」と、陸は真っ直ぐ光を見て言う。
“見せたかった”
陸が言った言葉に、あたしは深く聞き出す事が出来なかった。
だけど、あたしは凄く嬉しかった。
静まり返るこの空間の中、1ヶ月前の出来事があたしの頭の中に蘇り、あたしは小さく口を開く。