ふたつの羽根

あたしは急いでベンチの所まで駆け寄り、前の手すりにしがみ付いて上半身を手すりから投げ出す。


目に飛び込んできたのは、とてつもなく綺麗な街の光だった。 

一瞬でも瞬きをすると勿体ないんじゃないかと思うほどだった。


「綺麗だろ」


陸は手すりに両腕を置き、腕を絡める。

そして空に向かって息をフーっと吐き「里奈に見せたかった」と声を漏らす。



「あたし?」


首を傾げるあたしに「そう、里奈に…」と、陸は真っ直ぐ光を見て言う。


“見せたかった”


陸が言った言葉に、あたしは深く聞き出す事が出来なかった。 

だけど、あたしは凄く嬉しかった。


静まり返るこの空間の中、1ヶ月前の出来事があたしの頭の中に蘇り、あたしは小さく口を開く。


< 107 / 275 >

この作品をシェア

pagetop