ふたつの羽根
何段あるかわからない階段を上りきった時、静かな路地に2人だけの声が微かに響いていた。
その声はどー考えても陸と女の声…
あたしは思わず壁に自分の身を隠し耳を傾けた。
「…ってか何でお前が居るの?」
「何でって相変わらず陸は冷たいわね。あたしが居たら駄目なの?」
「留学は?」
り…留学?
「今は休憩って所かな」
「は?」
「って言うか、あたし陸に会いに来たの」
…えっ?!
“会いに来たの”って、あなたは誰ですか?
「帰れよ」
「嫌よ。あたし陸に会いに来たって言ってるじゃない」
静まり返るこの空間の中、女の笑い声が微かに聞こえる。
陸の声は全く聞こえず女の声だけが漏れてくる。
「ねぇ陸?前みたいな関係に戻ろうよ?」