ふたつの羽根
「あっ、心配しなくていいよ。あたし今はなーんとも陸の事、想ってないから。振られすぎて逆に嫌って言うか、あたし彼氏いるから」
香さんは何かを感じとったのか声を上げて言った。そして“陸よりいい奴だよ”と少しの嫌味も交えて言ってきた。
「あっ、それと新学期以来、拓真が心配してたよ。俺のせいだって」
拓真先輩が?
なんで拓真先輩が悪いの?
どう考えてもあたしじゃん。
「いや…悪いのはあたしなんです」
香さんはクスクス笑って手に持っているウチワを扇ぎだした。
「俺が悪い。あたしが悪い。って何だよ。お互い言い合うのもそのうち疲れるよ?あれ以来さ、陸あまり学校来てないんだ。でも陸は里奈ちゃんの事一途だよ。あの女に目くれるわけないじゃん」
「でっ、でも…」
「陸は幸せにするよ…」