ふたつの羽根
「ごめ…」
もう一度、声を上げるのかと思いきや有亜は首を振り「ごめん。言い過ぎた」と深いため息をついた。
「えっ、有亜が謝る事ないじゃん」
「ううん。ごめ…ちょっとイライラが積もり積もっちゃて」
キラキラと光ったくちびが密かに動いて有亜は頭を抱え込む。
普段の有亜じゃない姿に「何かあった?」と声を漏らす。
「たいした事じゃないから…」
そう発しられた言葉はどことなく悲しそうな声で、いつもの明るさの有亜じゃなかった。
「何?」
「たいした事じゃないよ。ちょっとコウキと喧嘩しただけだから」
少し驚いた。
喧嘩何ひとつしなかった有亜が喧嘩をした事に。