ふたつの羽根
わっ!拓真…先輩?
そうだ昨日あった拓真って人だ。
制服の着くずしかたが、またなんとも言えない軽そうな男に見える。
とりあえず無視するわけもいかないので、あたしは軽く微笑んで足を進めた。
「どう言う事?里奈、川崎先輩とも知り合いなの?」
パソコン室に入ってすぐ有亜は聞いてきた。
席は自由で、あたしは一番後ろの席に腰を下ろす。
目の前にあるパソコンの電源を入れると機械ならではの音が耳に伝わり
真っ黒だった画面が一気に明るくなって「昨日さ…」とあたしは口を開いた。
「昨日、川原沿いで純也と揉めてた時に陸が…って神藤先輩ね」
「うん」
「聞かれてたんだーってか、そのあと誘われて拓真先輩の店って言うかバイト先に行って…」
その後ダラダラと昨日の事を話すあたしに「へーなるほどね」と有亜はキーボードをカチカチと打ち始めた。