ふたつの羽根

「だって雅人は、あの川原沿いで女にビンタくらわされてるから」


そう言ってまたまた拓真先輩は思い出したかのようにして笑った。

それに吊られるようにして圭介君が笑い陸も「懐かしー」と声をあげる。


そんな3人を目にして、あたしは田上に目を向ける。


「さっき場所考えろって言ったよね?」

「うん」

「どーしてあんたがその場所でビンタくらってるんですか?面白いんだけど」



あたしは田上の顔を見て思わず声にだして笑った。


「人の不幸を笑うなよ!俺にも色々あんだよ」


嫌な顔をして眉を寄せる田上に皆はいっせいに笑いだす。


その笑い声と交ざるようにしてチャイムが鳴り響く。


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