ふたつの羽根

「知らないって。ここも初めてだし神藤先輩達とも話した事ないもん」

同じ中学だったけどね!

そう付け加えて有亜は辺りを見回す。

小さな声はステレオから流れてくる大音量の音と交じって聞き取りにくい。

必死に耳を傾けて有亜の声を聞き取るのに精一杯だった。 


カウンターに立つ田上が「有亜も飲む?」と口を開く。 

「あっ、うん」


田上は有亜の前にグラスを置く。

そう言えば田上とコウキさんが話しているところは何回か見た事があった。

この隠れ家みたいな所もコウキさん達からのたまり場なんだろう。

周りを見ると圭介君と拓真先輩は相変わらず騒ぎながら球を弾き合っている。

隣の陸はコウキさんと何やら会話が弾んでおり、カウンターに立つ田上は1本の瓶を片手に睨めっこ中。


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