お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
 ケースに入った和菓子を、テンポよく中型車に積んでいく。
 今や一人前の職人となった永亮だけど、たまに人員不足で銀座店に立ってくれることがある。
 若い客層が増えたおかげか、永亮はますます女性客に人気が出たようで、彼がたまにレジに立つと黄色い声が聞こえてくることがある。
 幼いころからずっと一緒にいる私はその現象が不思議でならないが、売り上げに貢献してくれているのならなんら問題はない。
「……なんだよ? 人の顔じっと見て。今さら惚れたか」
「さて、今日もたくさんうちの和菓子が売れますように、と」
「ガンつけといて無視してんじゃねぇ」
 永亮にしょうもない絡み方をされながらも、無事にすべての商品を車に積み終えた。
 その光景を見て、いつも心の底から願う。
 この子たちが、多くの人に小さな幸せを届けられますように、と。
 いつも本気でお願いをしている私を見て、永亮は呆れたように笑った。
「本当、お前はいくつになっても和菓子バカだな」
「それはお互い様でしょ」
「高臣さんにも、たまにはそれくらい愛情表現してやれよな」
「余計なお世話っ」
 私は永亮の肩をぽこんと叩いてから、車のキーをポケットから取り出して、車内に乗り込んだ。
 ドアを閉める直前で、永亮に向かって片手をあげる。
「じゃあ、売りに行ってきます」
「おう、よろしく頼んだ」
 いつも通り永亮のぶっきらぼうな言葉に笑みを返して、私は車を発進させる。
 職人に想いがこもった大切な和菓子を乗せて、私は銀座へと向かった。
 
 お店に着くと、先に最近バイトで入ってくれた茉奈(マナ)ちゃんが、店内の準備を進めてくれていた。
 狭いスペースなので基本的にお店に立つのは多くても三人なのだ。
 茉奈ちゃんはバイト経験が豊富な大学生で、とてもしっかり者で助かっている。
「おはようございます、店長。今日も商品の陳列から始めますか!」
「うん、そうしましょう。今日もよろしくお願いします」
 ポニーテールがよく似合っている茉奈ちゃんが、今日も元気よく商品を棚へと運んでいく。
 ちなみにうちで働こうと思った理由は、制服の着物が可愛かったから、という理由らしい。
 うちの制服はうぐいす色の簡易的な着物で、ひとりでも楽に着られるようにできている。
 どんな理由であれ、茉奈ちゃんが入ってきてくれてよかったと、心から思っている。
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