お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
「高臣さん、お待たせしました」
「凛子。お疲れ様」
 車の窓ガラスをコンコンとノックすると、高臣さんはすぐにドアを開けてくれた。
 そして、助手席に座らせていた美桜を、後部座席のチャイルドシートになんとか座らせて、車を発進させる。
 静かなエンジン音と共に車が動き始め、地下駐車場を出た。
「美桜は車の中で何を暴れていたの?」
「俺が結んだ髪型が相当気にくわないらしい。やはり凛子じゃないとダメだな」
「あはは、高臣さん意外と手先が不器用だから」
「仕事でできないことはないのにな……おかしい」
「パパのだとあたまのうしろがぐちゃぐちゃでいやなのっ」
 私たちの会話を聞いていた美桜が、うしろでムスッとした顔をしている。
 それを聞いた高臣さんは明らかにショックを受けた表情で、「そんなにぐちゃぐちゃか……」とぽつりと反省したようにつぶやいていた。
 いつもは自信たっぷりな高臣さんが、育児を通して色んな一面を見せてくれて、とても嬉しい。なんて言ったら、彼は眉を顰めるだろうけれど。
「あれ、これからどこか寄るの……?」
 ふと、家の方向に向かっていないことに気づいて、私は問いかけた。
 高臣さんは落ち着いた口調でこう答える。
「美桜の折り紙を見て思ったんだが、今日は少し夜桜を見てから帰らないか」
「あ、銀座通りとかの……? たしかに今、満開ですもんね。いいですね」
「よかった。きれいな桜を、凛子と見たいと思ったんだ」
 結婚して五年が経っても、高臣さんはさらっとキザなことを言ったりする。
 まだまだ明るい銀座の街を通り抜けて、私たちは桜が見えるスポットへと向かった。
 ふと、美桜が静かなことに気づいて心配になり振り返ると、そこにはいつのまにか熟睡している美桜がいた。
「ふふ、さっきまであんなに騒いでたのに……」
 美桜の寝顔を高臣さんもミラー越しにちらっと確認して、ふっと口角をあげていた。
 もう少し美桜の前でも分かりやすく笑えばいいのに……とも思うが、ポーカーフェイスなところも含めて高臣さんだ。
 私はそんなクールな彼の横顔を見ながら、桜が窓越しに現れるのを待った。
「あ、この辺、すごいきれいですね」
「ここら辺で少しだけ停めるか」
 ほどなくして、桜が道沿いに咲いているスポットにたどり着いた。
 車通りは少ないスポットで、少し薄暗いせいか人もちらほらとしいかいない。
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