お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~

夫婦なら……

▼夫婦なら…… 
 
 8畳の1Kに住んでいた私が、まさか今日からこの見上げるほどの高さのタワーマンションで同棲をすることになるだなんて……。
 私は少ない荷物をバッグに詰めて、茫然とロビー前で立ち尽くしている。
 もともと高臣さんが買っていたマンションに、私も今日から一緒に住むことになったのだ。
 荷物の整理をしていたら、もう夜になってしまった。
 高臣さんのためを思って、別々に暮らしてもいいと提案したのだけれど、彼はそれだと怪しまれるの一点張りで、部屋も余っているからと少し強引に説得された。
「やっていけるかな……」
 神楽坂でずっと地元の人に囲まれて育ってきた。
 見渡す限り高層ビルだらけのこの都会のど真ん中に、はたして馴染める日が来るのだろうか。
 一抹の不安を抱きながらも、私はぶんぶんと首を横に振って「頑張るぞ」と自らを鼓舞して足を進めた。
 
 〇
 
 ――婚約前提で高臣さんと交際したいと両親に告げたのは、今からつい二週間前のこと……お見合いした日の翌日だった。
 ふたりは目を丸くしたまま固まっていたけれど、私はもう決めたことだからと、力強く説得した。
「高臣さんの人間性もしっくり来たの。だから、結婚前提に進んでみたいと思う」
「り、凛子……。本当に? お店のためを思って無理してない?」
「してないよ。ふたりで話したとき、本当に意気投合したの。今までもそうやって進んできたけど、私、自分の勘を信じてるから」
 あながち嘘ではない。
 高臣さんのうちの店を思う気持ちはとても嬉しかったし、人間性も信用できると思った。
 政略結婚の件も、最初からとても割り切っていて話が早かった。そういった意味で意気投合できたと思う。
 両親はしばらく沈黙して動揺しているようだったけれど、私は揺るがない。
 ふたりが話さないのなら、と、私は押さえておきたい本題に移った。
「高臣さんは、本当にうちの和菓子を愛してくれてた。私……、高臣さんの会社となら、新しいことにチャレンジしていいと思うの」
 父は私の真剣な様子に少し驚きながらも、「そうか……」とつぶやいて腕組みをした。
 そんな父に、私は畳みかけるように提案をする。
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