お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
 昔から永亮は、自分の気持ちを押し殺すことが得意だった。
 そんな不器用な永亮を大切に思う気持ちは、昔と変わらない。
 だけど、"大切"の意味が、私と永亮ではハッキリと違うから。
 私は、情けのようなふわふわとした感情をすべて断ち切って、永亮の太い腕をガシッと両手で掴んだ。そして、ねじるように上へ押し上げると、案外簡単に腕が離れた。
「痛(イ)って、お前は敏腕警察官か」
「永亮が自分本位な感情をぶつけてくれたから、私も本音ぶつけるね」
「なんだその怖い宣言は」
「私、高臣さんが好きなの」
 そうハッキリ伝えると、永亮は一瞬目を見開いたが、黙って私の話を聞いてくれた。
 この前断ったときは、まだ高臣さんへの気持ちは揺らいでいて定まっていなかったけれど。
 でも今は、ブレない気持ちを持っている。
「だから、永亮の気持ちに応えられることはないよ。この先も」
「……そうか」
「うん、だから……ごめんなさい」
 永亮の腕から抜け出して、私はうしろを振り返りながら、まっすぐ永亮の目を見つめて謝った。
 ……これで、本当に終わり。
 永亮と幼なじみでいられるかどうかは、これからの私と永亮次第だ。
 もし元の関係に戻れなくても、私は永亮を責めることはできない。
 少しずつ、時間をかけて、いつか元に戻れたらいい。
 そして、永亮のことを一番に大事に思ってくれる誰かが現れることを、本当に心から願う。
 神妙な面持ちで永亮の言葉を待っていると、彼は「分かった」と小さくつぶやいた。
「俺は完全にフられたってことだな」
「そ、そうなります……」
「分かった。今はとりあえず、分かった……それしか言えない」
「うん……」
 永亮は今度は、"幸せになれよ"とは言わなかった。それでいいんだと思った。
 私は少しでも、彼の本音にまっすぐ向き合うことはできたのだろうか。
 なんて不安に思って永亮の目を見ると、彼はかすかに目を細めて、笑った。
 そして、なぜか私のうしろを指さす。
「で、数秒前からその大好きなご主人様がうしろにいるけど、大丈夫?」
「は……え!? 高臣さん!?」
 おそるおそる前に向き直ると、たしかにそこには、傘を差した高臣さんが立っていた。
 高臣さんは、何やら茫然とした様子で、私のことを見つめている。
 サーッと一気に血の気が引いて、私は永亮の肩を両手でつかんで強く揺さぶった。
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