お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
「なんですぐに言ってくれないの永亮!」
「いや、お前が急に高臣さんへの熱い愛を語りだすから」
 なんてことだ。
 旅館の様子を見ようとして、さっき窓を少し開けていたせいで、車内の会話も聞かれてしまっただろう。
 もちろん私の、こっぱずかしい告白も。
 ちゃんと気持ちを伝えるつもりでいたけれど、もちろんこんな予定じゃなかった。
 恥ずかしくて顔を見れないでいると、高臣さんが落ち着いた口調で話し始めた。
「高梨園の……、永亮さんですよね。何回かお店で合いましたね」
「……どうも」
「俺も今旅館についたところで、車から降りようとしたら丁度凛子からメッセージが来て、駐車場に入ってくるお二人が見えたんです。それで、挨拶に来たのですが……」
 ちらっと、高臣さんの視線を感じた私は、顔を真っ赤にしながら更にうつむく。
 そして、聞きたくないことをおそるおそる高臣さんに問いかけた。
「あの、いったいいつ頃からそこに……」
「凛子が華麗に永亮さんの腕をひねり上げて、私も本音をぶつけると啖呵を切ったところだな」
「あ……なるほど」
 すべてを把握した私は、何もかもを諦めて、車のドアを開けて外に出た。
 高臣さんはすかさず私に傘を傾けて、雨に濡れないようにしてくれる。
 私は永亮に軽く会釈をして、今すぐこの場から去ろうとしたけれど、高臣さんは私の腰を軽く抱き寄せ、強引に傘の中心へ近づける。
 思わずよろけた私は、高臣さんの胸におでこをぶつけてしまった。
 そして、高臣さんはそのまま私を強く抱き寄せながら、私の肩越しに永亮に向かって一言言い放ったのだ。
「婚約者がお世話になりました」
 ……高臣さんはいったい、今どんな顔をしているんだろう。
 いつもよりほんの少しだけ声のトーンが冷たく聞こえて、私は一瞬ゾッとした。
 永亮は「どういたしまして」と愛想ない声で返してから、そのまま車をゆっくりと発進させて、去っていく。
 降りしきる雨の中、ひとつの傘に入っている私たちは、車が去っていく様子を二人で見送る。
 そして完全に車が見えなくなると、高臣さんは色っぽい声で耳元で囁いた。
「凛子、部屋に入ったら全部を説明してくれるか」
 私はそのお願いに、従うしかない。
 雨音に包まれながら、私は観念したように、こくりと頷いたのだった。
 
 〇
 
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