お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
 壁一面の大きな窓からは、管理の行き届いた美しい庭が見えた。
 庭をゆっくり眺めることができるテラスの手前には、部屋で一番の存在感を放っているキングサイズの高級そうなベッドが置かれている。どれだけ寝返りをしても床に落ちることはなさそうなほど広い。
 そんなリビングルームの隣には、食事をするための部屋があるけれど、私が遅れることを考えて、高臣さんがすでに食事の時間を一時間半後にずらしてくれていたようだ。
 何から何までお世話になってしまい申し訳なく思って棒立ちしていたが、庭をゆっくり眺める用に置かれているソファーベッドに、浴衣姿の高臣さんは腰掛けた。それから、私の方を振り返って優しい顔で手招きをする。
「こっちにおいで。やっぱり凛子は浴衣が似合うな」
「すごく立派な生地の浴衣で驚きました……」
 私も高臣さんと同じように藤色の浴衣に着替え、彼の隣にゆっくり座った。
 備え付けの部屋着とは思えないほど上等な浴衣に、つい感心しきっていると、高臣さんに肩を抱き寄せられた。
 鈍色の浴衣姿の高臣さんは、普段の何倍もの色気があるから、つい隣にいるだけで緊張してしまう。
 いや、そんなことを考えている場合ではない。
 さっきの状況を説明しなければと、部屋に入ったときからそのことで頭の中がいっぱいだ。
 私は高臣さんに何かを問いかけられる前に、重い口を開いた。
「あの、高臣さん。私が先ほど永亮に護身術を決めていたのにはわけがありまして……」
「完全に決まっていたな」
「とくに言わなくてもいいかと思っていたのですが、ちょっと前に永亮に告白されまして」
「……なるほど」
「うしろから抱き締められたので驚き、腕を振りほどき、告白を改めて断っていた、という状況だったんです……」
 いったいどんな状況だと、自分でも突っ込みをいれたくなった。
 高臣さんは私の肩を抱き寄せたまま庭を見つめ、静かに頷いている。
 反応が薄いことが逆に怖くなり、私は高臣さんの顔色を横からうかがった。
 でもその表情からは何も読み取れなくて、私はますます不安になった。
 振り回され過ぎて迷惑に思っている? 呆れて言葉も出ない?
 それとも、仕事で疲れて考える気力もない?
 このきれいな顔から感情を察することは、とても難易度が高い。
「……怒りで、気が狂いそうだった」
「へ……」
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