お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
「近年、フルーツ大福はお取り寄せで人気を博していますが、高梨園のフルーツ大福は格が違います。桃とカスタード、いちじくとクリームチーズ、柿と白餡……。和菓子界では斬新な組み合わせで勝負していますが、味は品があり老舗和菓子屋の気概が感じられます。さらに、フルーツに止まらずフルーツトマトやそら豆など野菜を使用した大福も考案し、話題性を高めています」
 凛子がこだわったのは、健康に気遣っている人にも和菓子を食べてほしいということだった。
 糖質は最小限に抑え、素材そのものの甘さを活かし、栄養素を壊さないように取り込んでいく。
 社員食堂でダイエット中の女性を見るたびに、甘いものを罪悪感なく食べてほしいという気持ちが増していたようだ。
 ビジネスの目線で見ても、贔屓目なしに新商品のフルーツと野菜を使った大福の完成度は、高かった。
「銀座という地で、高梨園の二号店は万全の準備をしています。和菓子売り場をより盛り上げる起爆剤となることを期待して、力を注いでまいります。以上です」
 担当者の発表が終わり、社員全員の表情をうかがうと、反応は上々のようだった。
 凛子が今日のために商品を完成させて、しっかり写真もスタジオで撮って用意しただけあった。
 彼女の努力が報われたことを、社員に対して思うように、素直に嬉しく思った。
「代表から最後に一言ございますか」
 咲菜に指名され、俺は椅子から立ち上がる。
 今回のリニューアルオープンは、新店舗をオープンすることだけでなく、消費者の行動を考え、再構築していくかなり大規模な試みだった。
「今回、食品フロアで五つの新規店をオープンすることは、話題作りに大きく貢献してくれるだろう。だが、今回の目的は真新しさや、一時の客足増加ではない。多様化しているファッションフロアを大幅に減らし、食品フロアに力を入れ、インバウンド観光客向けのフロアも新たに増やした。常連のお客様は最初は戸惑われるかもしれないが、長い目で見てお客様のライフスタイルに寄り添えるよう、試行錯誤を繰り返し変わっていこう。以上」
 中のことは、社員たちが汗水流して十分に用意してくれた。
 あとはもう、俺がそれを無駄にしないように受け取って、バトンを繋げていく作業だ。
 話題づくりに貢献してもらえそうな会社に、最後の最後まで心血を注ごう。
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