お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
うちという百貨店を信じ、新たな希望を見出してくれている新規店を裏切ることのないよう、改めて心に誓った。
〇
side凛子
瞬きをしている間に、夏が終ってしまったかのようだった。
それほど、京都旅行から帰ってきてからの一カ月は、多忙の極みだった。
高臣さんも毎日残業で、一緒に夕ご飯も食べられない日々が続き、私も仕事終わりに実家へ戻り和菓子の試行錯誤を繰り返す毎日。
あっという間に九月に入り、あと三週間後の十月一日にはリニューアルオープン……というところまできてしまった。
昨夜はようやく高臣さんと夕飯を一緒に食べることができたけれど、まだまだ気が抜けない。
――そしてリニューアルオープンが近づくごとに、私を管理栄養士として雇ってくれた委託会社との契約も、あと数日で終わろうとしていた。
「前々から分かってたことだけどさー。高梨ちゃん辞めたら、もう誰にもアイドルの熱を発散できないよ」
「岡田さん、いつでも連絡ください! 私も連絡しますんで、これからもランチしましょう」
休憩時間が被った岡田さんと、私は事務室でお茶を飲んでいた。
私の出社が今週いっぱいで終わることとなり、すでに後任の引継ぎが始まっている。
岡田さんは私がいなくなることを本気で寂しがってくれて、なんだかとても嬉しい。
と言っても、ここを辞めた後は地下の食品フロアで働くことになるだけなので、いつでも会えるんだけど……。
そのことを、今日の終礼後に皆の前で報告しようと思っていたが、岡田さんには一番に伝えたいと思って、私は口を開いた。
「あの、岡田さん。私の次の職場なんですけど……」
「あ、そういえば実家を継ぐんだよね?」
とそのとき、事務室に後任である管理栄養士の、井山(イヤマ)さんが入ってきた。
「あ、井山さん、お疲れ様です」
思わず私は言いかけた言葉を飲み込む。
井山さんは私よりも三歳若いけれど、しっかりとしていて物覚えもいい。
若干愛想はないときもあるけれど、希望の異動だったということもあり、今とても頑張ってくれている。
井山さんが帽子を外した瞬間、茶色い美しい巻き髪があらわになって、私は思わずその動作に見惚れてしまった。
視線を感じた井山さんは、私の方を振り返って、「なんですか」というように眉を一瞬顰める。
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side凛子
瞬きをしている間に、夏が終ってしまったかのようだった。
それほど、京都旅行から帰ってきてからの一カ月は、多忙の極みだった。
高臣さんも毎日残業で、一緒に夕ご飯も食べられない日々が続き、私も仕事終わりに実家へ戻り和菓子の試行錯誤を繰り返す毎日。
あっという間に九月に入り、あと三週間後の十月一日にはリニューアルオープン……というところまできてしまった。
昨夜はようやく高臣さんと夕飯を一緒に食べることができたけれど、まだまだ気が抜けない。
――そしてリニューアルオープンが近づくごとに、私を管理栄養士として雇ってくれた委託会社との契約も、あと数日で終わろうとしていた。
「前々から分かってたことだけどさー。高梨ちゃん辞めたら、もう誰にもアイドルの熱を発散できないよ」
「岡田さん、いつでも連絡ください! 私も連絡しますんで、これからもランチしましょう」
休憩時間が被った岡田さんと、私は事務室でお茶を飲んでいた。
私の出社が今週いっぱいで終わることとなり、すでに後任の引継ぎが始まっている。
岡田さんは私がいなくなることを本気で寂しがってくれて、なんだかとても嬉しい。
と言っても、ここを辞めた後は地下の食品フロアで働くことになるだけなので、いつでも会えるんだけど……。
そのことを、今日の終礼後に皆の前で報告しようと思っていたが、岡田さんには一番に伝えたいと思って、私は口を開いた。
「あの、岡田さん。私の次の職場なんですけど……」
「あ、そういえば実家を継ぐんだよね?」
とそのとき、事務室に後任である管理栄養士の、井山(イヤマ)さんが入ってきた。
「あ、井山さん、お疲れ様です」
思わず私は言いかけた言葉を飲み込む。
井山さんは私よりも三歳若いけれど、しっかりとしていて物覚えもいい。
若干愛想はないときもあるけれど、希望の異動だったということもあり、今とても頑張ってくれている。
井山さんが帽子を外した瞬間、茶色い美しい巻き髪があらわになって、私は思わずその動作に見惚れてしまった。
視線を感じた井山さんは、私の方を振り返って、「なんですか」というように眉を一瞬顰める。