お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
「井山さん、もう随分仕事に慣れてくださって助かります」
私がぺこっと頭を下げると、彼女もわずかに会釈を返す。
岡田さんはそんな少し愛想のない井山さんが苦手なようだけど、私が辞めるまでのあと一週間、しっかり引き継がないと。
そうこうしている間に、休憩時間が終わりそうになった。
他の社員に呼ばれ、岡田さんは私よりも先に事務室を出て、厨房へと小走りで向かっていく。
タイミングを逃してしまったのは仕方ない。
岡田さんにはあとで二人きりになったときに話そう……そう思い立ち上がると、井山さんが私の名前を突然呼んだ。
そして、衝撃的なことを言ってのけたのだ。
「あの、高梨さん。昨日、この百貨店の代表と二人で会っていませんでしたか」
「え……?」
「三津橋高臣代表と」
頭が真っ白になって、すぐに言葉が出てこなかった。二人きりの事務室に沈黙が流れる。
昨日はたしかに、久々に銀座で高臣さんと一緒に食事をしていた。
それを偶然、彼女に見られていた……?
隠していたわけではないけど、岡田さん以外に公表しようとも思っていなかった。
高梨園が無事オープンするまで、余計な騒ぎは立てたくないと考えていたからだ。
井山さんは私のことを鋭く見つめながら、「その反応だと本当だったんですね」と冷静に返した。
「私、ここを希望した理由、三津橋さんのそばで働きたいからだったんです」
「え……?」
「昔、経営が傾いていたうちの家業を、助けて頂いたことがあって……」
……すごく、私と似た状況だ。
高臣さんは小さなお店と伝統を守りたい、という気持ちがとても強い。
これまでも何度かそんな援助をしてきたと、そういえばいつか聞いたことがあった。自分のことを語るのを恥ずかしがるので、彼はあまり話してくれなかったけれど。
「課長から聞きましたが、お仕事を辞めて和菓子屋を継ぐそうですね」
「あ、そうなんです……。今日の終礼で言うつもりだったんですけど」
「しかも、高梨園がこのタイミングで二号店を秋からオープンすると聞いて……、高梨さんも、彼に援助してもらったんですか」
「え、援助というか、取引というか……」
するどい質問に、なぜか額に汗がにじんでいく。
追い詰められている気持ちになっているのは、彼女の瞳がとても攻撃的だから。
私がぺこっと頭を下げると、彼女もわずかに会釈を返す。
岡田さんはそんな少し愛想のない井山さんが苦手なようだけど、私が辞めるまでのあと一週間、しっかり引き継がないと。
そうこうしている間に、休憩時間が終わりそうになった。
他の社員に呼ばれ、岡田さんは私よりも先に事務室を出て、厨房へと小走りで向かっていく。
タイミングを逃してしまったのは仕方ない。
岡田さんにはあとで二人きりになったときに話そう……そう思い立ち上がると、井山さんが私の名前を突然呼んだ。
そして、衝撃的なことを言ってのけたのだ。
「あの、高梨さん。昨日、この百貨店の代表と二人で会っていませんでしたか」
「え……?」
「三津橋高臣代表と」
頭が真っ白になって、すぐに言葉が出てこなかった。二人きりの事務室に沈黙が流れる。
昨日はたしかに、久々に銀座で高臣さんと一緒に食事をしていた。
それを偶然、彼女に見られていた……?
隠していたわけではないけど、岡田さん以外に公表しようとも思っていなかった。
高梨園が無事オープンするまで、余計な騒ぎは立てたくないと考えていたからだ。
井山さんは私のことを鋭く見つめながら、「その反応だと本当だったんですね」と冷静に返した。
「私、ここを希望した理由、三津橋さんのそばで働きたいからだったんです」
「え……?」
「昔、経営が傾いていたうちの家業を、助けて頂いたことがあって……」
……すごく、私と似た状況だ。
高臣さんは小さなお店と伝統を守りたい、という気持ちがとても強い。
これまでも何度かそんな援助をしてきたと、そういえばいつか聞いたことがあった。自分のことを語るのを恥ずかしがるので、彼はあまり話してくれなかったけれど。
「課長から聞きましたが、お仕事を辞めて和菓子屋を継ぐそうですね」
「あ、そうなんです……。今日の終礼で言うつもりだったんですけど」
「しかも、高梨園がこのタイミングで二号店を秋からオープンすると聞いて……、高梨さんも、彼に援助してもらったんですか」
「え、援助というか、取引というか……」
するどい質問に、なぜか額に汗がにじんでいく。
追い詰められている気持ちになっているのは、彼女の瞳がとても攻撃的だから。