お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
まさか政略結婚をはじめは約束していただなんて、言えるわけがない。
「どうやって彼に取り入ったんですか? 三津橋さんはうちの家業に興味はあっても、私には見向きもしなかった……」
井山さんは悔しそうな顔で帽子を握りしめ、少しずつ私に近づいてくる。
私は思わず一歩あとずさり、ロッカーに背中をくっつけてしまった。
見向きもしなかった……というのは、私も同じだ。
初めて会ったあの日、高臣さんの瞳に私は全然映っていなかった。政略結婚の提案を、機械のように淡々としていた。
「また会いたいと思って、偶然うちの会社がここの社食を任されていると知ったときは運命だと思った。付き合うなんて絶対無理な身分だと分かってたから、距離が近づくだけでよかった。それなのに……」
「い、井山さん……」
「そんな顔して、高梨さんて意外としたたかなんですね。彼は優しいから……、あなたの"家"を救ってあげただけなのに。結局そこでがっつける人が、幸せ掴むんですかね」
そこまで言い放つと、井山さんは冷たい表情のまま、事務所のドアを乱暴に開けて外に出てしまった。
私は茫然自失としてその場に立ち尽くし、彼女に言われた言葉を数秒遅れで頭の中で再生していく。
人生でこんなにも誰かに敵意をむき出しにされたのは、はじめてのことだった。
「な、何も返せなかった……」
私は心臓付近を右手で押さえながら、このあとの終礼をどうやり過ごし、残りあと一週間をどう過ごしていくのか……不安で胸をいっぱいにしていた。
〇
「なんだお前、辛気臭い顔してんな」
「永亮……。いきなり刺すの止めて」
仕事帰り。悩んだ私が取った行動は、和菓子を作って心をお落ち着かせようという手段だった。
高臣さんの帰りは今日も遅く、日付が変わるころまで帰ってこれない。
閉店後の高梨園に着くと、作業場だけ明かりがついていたので、ちらっとのぞくと思った通り永亮がいた。
京都旅行の後から何度も顔を合わせているが、告白なんてなかったかのように、永亮は普通に接してくれている。いや、普通どころか嫌味がいつもより増している気もする。
「ちょっと今日は色々あったの……。HPはもうないので優しくして……」
「……分かった。おはぎ残ってるから食え」
「え! 本当!?」
「元気じゃねぇか」
「どうやって彼に取り入ったんですか? 三津橋さんはうちの家業に興味はあっても、私には見向きもしなかった……」
井山さんは悔しそうな顔で帽子を握りしめ、少しずつ私に近づいてくる。
私は思わず一歩あとずさり、ロッカーに背中をくっつけてしまった。
見向きもしなかった……というのは、私も同じだ。
初めて会ったあの日、高臣さんの瞳に私は全然映っていなかった。政略結婚の提案を、機械のように淡々としていた。
「また会いたいと思って、偶然うちの会社がここの社食を任されていると知ったときは運命だと思った。付き合うなんて絶対無理な身分だと分かってたから、距離が近づくだけでよかった。それなのに……」
「い、井山さん……」
「そんな顔して、高梨さんて意外としたたかなんですね。彼は優しいから……、あなたの"家"を救ってあげただけなのに。結局そこでがっつける人が、幸せ掴むんですかね」
そこまで言い放つと、井山さんは冷たい表情のまま、事務所のドアを乱暴に開けて外に出てしまった。
私は茫然自失としてその場に立ち尽くし、彼女に言われた言葉を数秒遅れで頭の中で再生していく。
人生でこんなにも誰かに敵意をむき出しにされたのは、はじめてのことだった。
「な、何も返せなかった……」
私は心臓付近を右手で押さえながら、このあとの終礼をどうやり過ごし、残りあと一週間をどう過ごしていくのか……不安で胸をいっぱいにしていた。
〇
「なんだお前、辛気臭い顔してんな」
「永亮……。いきなり刺すの止めて」
仕事帰り。悩んだ私が取った行動は、和菓子を作って心をお落ち着かせようという手段だった。
高臣さんの帰りは今日も遅く、日付が変わるころまで帰ってこれない。
閉店後の高梨園に着くと、作業場だけ明かりがついていたので、ちらっとのぞくと思った通り永亮がいた。
京都旅行の後から何度も顔を合わせているが、告白なんてなかったかのように、永亮は普通に接してくれている。いや、普通どころか嫌味がいつもより増している気もする。
「ちょっと今日は色々あったの……。HPはもうないので優しくして……」
「……分かった。おはぎ残ってるから食え」
「え! 本当!?」
「元気じゃねぇか」