俺様社長と溺愛婚前同居!?

「あっ、やっちゃった」


 この食器はHANAから用意したものだから割ってしまっても問題はないが、片付けをしなければならなくなってしまった。破片が飛び散っていないか細心の注意を払いながら集めていると、指にぴりっとした痛みが走る。


「いた……っ」


 慌てていたせいで、指先を切ってしまった。

 ぱっくりと割れた傷から血が零れる。

 キッチンペーパーで止血をして、粘着テープでぐるぐる巻きにすればいいかと思うものの、キッチン周りに粘着テープがない。
 とりあえずキッチンペーパーで指を巻いて、オフィスフロアのほうに向かおうと飛び出すと、誰かにぶつかった。


「きゃっ……」

「わあ」

 衝突した衝撃で後ろに突き飛ばされそうになったところを、腰に手を回して引き寄せられた。
 私の体がすっぽりと収まる大きな体に包まれて、一瞬何が起こったのか理解できずにきつく目を瞑る。


「大丈夫か?」

「あ……えっと……」


 上から男性の低い声がして、ゆっくりと目を開いた。
 目の前には触れたことのない上質な生地のダークネイビーのスーツ。ふわっと広がる爽やかな香りに驚きながら、何度も瞬きする。

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