俺様社長と溺愛婚前同居!?

 本気ですか? と何度も聞いたが、そのたびに「本気だ」と返事された。しつこく聞くと、彼の機嫌が悪くなり、唇で口を塞がれそうになるので、執拗に聞くのを止めたほどだ。


「でも……本気じゃなかったら、うちの両親に挨拶しないもんね……」


 娘さんをください、と真剣な顔で頭を下げて許しを乞う姿は、どこからどう見ても本気のようだった。

 そんなことをしなくても、専属料理人として雇うこともできたはずなのに。

 そうしてでも既婚者になりたかったのだろうか。

 いろいろと考えるけれど、賢人さんの気持ちがさっぱり分からない。他人の心のうちなど、どれだけ考えても分かるはずがない、と気持ちを切り替えて、インターホンを押した。


『はい』

「高梨です」


 うちの実家からここまでは、車で十五分くらい。荷物を業者に預けてから電車で向かってきたので、だいぶ時間が経っている。もう引っ越しの荷物は運び終わっているころだろう。

 名前を告げてしばらく待っていると、玄関の扉が開かれる。


「どうぞ」

 奥から顔を出したのは賢人さんなのだけど、いつもと雰囲気が全然違う。

 ベージュのラフなニットに、黒のスキニーパンツを穿いていて、髪もセットされていなくていつもより少しだけ幼く見える。

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