【完】爽斗くんのいじわるなところ。

ショックでまた泣きそうになったあたしを見て
爽斗くんが小さく噴き出した。


「……0.9、0.8、」


あ……!


カウントがよみがえった。


仕方なさそうな声色だけど、今度はさっきよりずっとゆっくりのカウントダウン。


一生懸命考えてるんだけど。


「0.2ー、0.いーち、」「遊園地!」


「に、行きたいです……。爽斗くんと……」


ぎりぎりなんとか閃いて滑り込んだのは
遊園地なんてお手軽じゃない場所……。


「……遊園地に?」


爽斗くんの声は気乗りしなそうだ……。


遊園地なんて
あたしと行って楽しいわけないもん……当たり前だよね。



「あ……ううん、嘘。嘘です、お願いは……大丈夫」



固く笑うあたしのすぐ横に座ると、
爽斗くんはスマホをいじり始めた。


……もう聞いてない。


またスマホでゲームし始めるのかな。



はぁ……もっと簡単なお願いにすればよかったな。


本当は最初の5秒で
”もう一回抱きしめてほしい”って
言いたかったんだ。



絶対……言えるわけなかったけどね。


< 119 / 388 >

この作品をシェア

pagetop