【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「暴力で解決すんの? 頭悪そ」
でも、爽斗くんはケロッとそう言ってしまって、隠された視界の中でヒヤヒヤしてしまう。
案の定返ってくるのは、苛立った怒鳴り声。
「おい、こら!!」
「その声やめてくんない? ほかのひとが見てるよ。恥ずかしくないの?」
冷静な爽斗くんの声。でも彼らの耳に届くことはないみたいだ。
バクバクとあたしの心臓が鳴っている。
どうしよう……。こんなことになるなんて。
爽斗くんがもしこんなところで喧嘩をしてしまったら、どうしよう。
小さい頃たびたび見た、爽斗くんの喧嘩の光景が目に浮かぶようで、
さーっと血の気が引いていく。
だめ。絶対にとめなきゃ……。
「うるっせえ、お前こっちこいや!」
ヒートアップした金髪の男子の怒声と同時に、あたしの体はなぜか勝手に動いて、
気づけば、爽斗くんの腕を思い切りふり払っていた。
がばっと、爽斗くんの前にたちはだかって、不良たちの険しい顔と対峙する。
「……っ」
ドクンドクンとばかみたいに心臓が鳴っている。
「……、ご」
声が、出ない。
……、勇気を振り絞って。
「ご注文は……、っ、何にしますか……」
涙をポロポロ流して見上げると、不良たちは数回目を瞬かせると、
「……いらねーよ」と舌打ちして、ばつが悪そうに店を出て行った。
騒然とした教室で、
遅れてあたしに視線が集まってくる。
別に、だれかが何かを言ってるわけじゃない。
だけど。
……刺すような視線を感じて、深く俯いた。
このクラスで、お客さんを出て行かせるなんて、そんな失態をおかしたのは、あたしだけだ……。