極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました



   ☆☆☆


 根本が自宅まで送ってくれることになり、畔はそれに甘えたのだ。夜中だったため撮影した場所付近にあるホテルに泊まる予定だったが、畔はどうしても椿生が待つ部屋に帰りたかった。そこまで離れた場所でもないので、タクシーに乗ってしまえば40分ぐらいで到着するだろうと思っていた。が、根本は『私も事務所に戻るから一緒に帰りましょう。方向は一緒よ』と言ってくれたのだ。

 椿生のマンションに到着し、根本に頭を下げると根本は優しく手を振ってくれる。根本が運転する車を見送った後、畔はマンションの中へと向かった。

 畔が帰ってきて暗くないように、廊下の電気をつけていてくれたのだろう。彼の気配りに感謝しながら、畔はこっそりと寝室へと向かった。

 「畔………?帰ったのか?」

 椿生がベットから起き上がり、畔の方を見て小さく手を上げた。どうやら、起こしてしまったようだ。畔は手を合わせて謝りながら、彼の方へと近づいた。

 『ごめんなさい。起こしてしまって……』
 『いいんだ。畔が帰ってきたら起きようと思っていたし。俺もさっき帰ったばかりなんだ』
 

 椿生はそう言いつつも眠たそうに目を擦った。この日の夜は、椿生もあるイベントがあるため夜遅いと話していたのだ。どうやら、彼も遅くまで仕事を頑張っていたようだ。

 『お疲れ様です、椿生』
 『畔こそ、お疲れ。ホテルに泊まるかもしれないって言ってただろ?帰ってきて疲れただろ?』
 『撮影が早く終わったんです。それに、帰ってきたかったので』
 『一晩でも俺に会えないのが寂しかった?』
 『寂しかったです』

 素直に自分の気持ちを認めると、椿生は少し驚きながらも、すぐに笑みを浮かべた。
 そして、畔の頭をポンポンッと優しく撫でてくれる。
 その笑みを見るために帰ってきた。ぬくもりを感じたいからここに戻ってきたんだ。畔はそう感じ、ゆっくりと彼に体を寄せ、抱きついた。

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