極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました

 店を出ると椿生はタクシーを停めて、畔を乗せた。畔が運転手にマンションの近くの場所を伝えると、椿生は運転手にお札を手渡した。

 『また会おうね。バイバイ』

 そう手話で挨拶をすると、椿生は同じタクシーには乗らずに手を振って畔が乗車したタクシーを見送った。
 てっきり彼も一緒なのだと思っていた椿は焦っておじきをするだけが精一杯で、小さくなっていく彼を見つめた。


 タクシーの中で、畔は夢のような展開に、信じられない思いでいっぱいになった。

 (本当にあの人に会えたんだよね。夢じゃないよね)

 先ほどまで実際に会っていたというのに、それが信じられない。畔は慌てて、スマホを開いた。そこには、紛れもなく椿生の名前と連絡先がある。それを見て、やっと実感出来た。


 手を繋いで走った公園。お酒を飲みながら手話やスマホを使っての話。
 大きな綺麗な瞳や笑った顔、仕草、ゆったりとした声の振動。彼の何もかもが畔の心を大きく揺らした。

 (早く会いたいな………)

 自然とそんな思いが浮かんでくる。

 それで気づいた。
 自分の心の変化を。

 (私、椿生さんに恋してるんだ)

 気になる存在から、好きな人になった。
 会ったことで大きくなっていく、その会いたいという気持ち。憧れや一目惚れだけではない。その気持ちに気づくと、後は恋しくなってしまうだけ。

 畔は初めて好きな人が出来たのだった。
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