【コミカライズ】漆鷲社長の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―
それから一ヶ月ほどが経ったころ。
僕の住むレジデンスから、オフィスビルまでは徒歩数分の距離にあった。
黒のニット帽で目立つ髪を隠し、黒のマフラーをぐるぐるに巻き、サングラスをかけて、私服で出勤する僕は、今日も前を歩いている人物を心の中呼んだ。
『真島さんだ』
着心地が良さそうな黒のニットと機能性のある薄手のグレーのダウン。
黒のハンドバッグをぶら下げて、シンプルなデニムのパンツを履いた後ろ姿。
毎朝、レインボーヒルズビレッジ内のバス停の方から眼鏡を光らせて、小さな背筋をぴんとした彼女はいつも早足で出勤する。