【コミカライズ】漆鷲社長の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―

本来ならスーツで爽やかに「おはよう」と声をかけたいところだが、朝から女性社員に囲まれて、どうでもいい質問を繰り返されるのはごめんだ。

私服で出勤し、社長室でスーツに着替えるのが、就任して一ヶ月の、僕のお決まりのパターンと化していた。

だから、わきを通り過ぎるときに一言。


「おはようございます」


すると前を向いたまま、


「おはようございます」


挨拶なんて返さない人もいる中、彼女からは必ず返ってくる。

これが最近の朝の楽しみになっていた。

しかし、この日は通り過ぎる瞬間に、一瞬だけ眼鏡がこちらを向いた。

反射していて表情が見えないあの眼鏡の下は、どんな顔をしているんだろうか。
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