王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】


「社員証を落としたシンデレラ」

「え?」


箱をサイドボードの引き出しの中にしまっていたら、ちょうど今、浮かべていた言葉が隣から降ってきて驚いた。

振り返ると、まだ髪が乾いていない永斗さんが穏やかに微笑んでいて、黙ったまま私を見つめていた。


「なんだか懐かしいですね。あのときのこと」

「そうだね⋯⋯」

「ご両親に出会いを聞かれたときは、どうしようかと考えしまいました」


きっと本当のことを聞いたらビックリするに違いないし。

永斗さんがうまくごまかしてくれて良かった。


そう伝えると、永斗さんは麗しい唇から小さく息を吐き、部屋の間接照明に視線を向けながら、思案げな表情を浮かべる。


どうしたんだろう?

何か気に障るようなことを言ってしまっただろうか?

それとも、移動も多かったし疲れたのかな。

早く休んでもらったほうがいいかも。


そう考えた私はすくっと立ち上がり、鏡台にドライヤーを取りに行くために永斗さんの前を横切ろうとしたら、その腕を取られた。
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