王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
『――僕と結婚して』
何度も、夢に出てくる。
ほとんど初対面なのに、甘いセリフを次々と言った漆鷲社長。
頬を傾けてゆっくりと近づいてきた、美しい顔。
鼻が触れ合った瞬間、食べるように何度も啄む唇。
優しく髪を梳いた長い指先。
押し付けられる厚い胸板。
官能的に背中を撫でる大きな手のひら。
ひとしきりキスを交わしたあとの、潤った唇で、
『今から三ヶ月、君を全力で口説き落とす』
なんて甘い爆弾投入して。
膝がガクガクでしばらく硬直している私に、
『もういっかいする?』
親指で唇を拭いながら色っぽくささやいた。
あああ! 朝から思い出しちゃだめだ!
ファーストキスの私にとって⋯⋯
いや、そうじゃなくても、あの全身の力を奪うキスは刺激が強すぎる。
社内では優雅な紳士で、王子様と言われているのに
意地悪な表情を見せたり、突然巧妙なキスをしてくるような人だとは思わなかった。
あんなに綺麗な顔してるけど⋯⋯男の人、なんだと実感させられた。