王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
「さて、名残惜しいが、そろそろ仕事に戻るか」
真っ赤な私をよそに、スイッチを切り替えた社長は、身体を離し棚に置いてあったファイルを数冊抱えた。
私はヨロヨロと、なんとかドアの前から避けて
「では、ディナー楽しみにしてるよ。」
扉が閉じたあと、ようやく緊張から開放された私は、ヘナヘナと床にへたり込んだ。
な、なんなんだ⋯⋯
自由すぎませんか⋯⋯ちょっと?
ほんと心臓がもたない。
髪に触れる繊細だけど少しだけ骨ばった指の感触。
おでこに当てられた、柔らかい唇。
見たことないその表情が、自分だけに向けられた特別なものと勘違いして、胸が甘く締め付けられる。
なんなの⋯⋯
ものすごく振り回されてる。
私は少しだけ胸を抑えたまま、その場に佇んでいた。
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