友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
渉がいてくれたから、ちゃんと逃げずに向き合うことができた。

「本当にありがとう。」
「いいって。もう、泣くな。赤ちゃんびっくりしてるぞ?きっと。」
私の涙を拭いながら渉が困ったように笑う。
「だって・・・」
「涙だって出るよな。うれしいよな。本当によかったよ。」
まるで自分のことのように喜んでくれる渉に私は心から感謝をした。


「よし。帰ろう。」
私のお腹を撫でて、渉が笑った。
「うん」
「シチューおいしかったな。」
「うん」
「ニンジンが嫌いだって知らなかった」
「・・・そう?」
「うん」
お互いにまだ知らないことが私たちにはたくさんある。
< 267 / 367 >

この作品をシェア

pagetop