友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
第3章 運命の一夜
「・・・嘘つき」
小さな声が私の耳に聞こえてくる。

渉の方を見たら余計に墓穴を掘るだけだと窓の外の景色を見ることに集中していると、また小さな声が聞こえて来た。

「下手なんだよ、お前は嘘つくのが」と。

確かに。私は渉と会ってから嘘ばっかりだ。

でも今に始まったことではない。
今までだって、本当の自分を隠すために何度も何度も嘘をついてきた。

自分の気持ちにさえ嘘をついて、その嘘を重ねてきた私。

周りの人まで巻き込んで嘘をつくなんて・・・結局私という存在は・・・

いけない、これ以上考えたら泣いてしまうかもしれない。
そう思った私は渉に気づかれないように小さく深呼吸をした。
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