君と一緒なら

5.好きなもの




 今、私と真宙くんは何も話してはいない。

 静かに、そして穏やかに時が流れている。

 そんな中、上を見た。

 視界に入ったのは、美しい緑が広がった世界。

 そこに風が吹けば、美しい緑の葉がやさしく揺れる。

 そのときに葉っぱ同士が触れ合って生まれた音。
 それは、まるでやさしい歌声が聞こえてくるような。
 そんな感覚を覚える。

 その歌声が。
 とても穏やかで。
 とても美しく感じた。


 私は、その歌声に夢中になっていた。



「なんかさ、いいよね」


 そのとき。

 真宙くんがそう言った。


「みんなが学校にいるときに、
 それ以外の場所で、こうしてのんびりとくつろいでるのって、
 なんか特別な時間を過ごしてるみたいで」


 あ……。


 真宙くんの言葉で気付いたことがあった。

 なんで真宙くんは『学校を休もう』と言ってくれたのだろう。

 真宙くんも私と同じで学校を休みたかったのかな。


 ……って。

 ……‼


 もしかして……。

 私のため……?

 私が今日、学校を休みたいと思っていたから。
 真宙くんはそれを察して合わせてくれた……?


 ……って。

 そんなわけはないよね。

 私とは今日、話したばかりなのに。
 そんなことあるわけがない。


 って、前からの知り合いや友達でも。
 休みたい人に合わせるなんて。
 そんなこと……ないよね……。


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