先輩、後ろの2文字ください。

「ここに来たかったの?」

「はい。欲しい本があって、それを買いに。先輩も本好きだし、連れてきたかったんですよ」

「……そうなんだ」


“私のことまで考えてくれてありがとう”その言葉が脳裏に浮かんだけれど、心の中で留まってしまった。

……素直にお礼を言うなんて、私らしくないし。そんな変な意地が、言葉を飲み込む原因となっていた。


「はぐれたら困るので……」と差し出された右手。恥ずかしさで強がった私に起きた天罰。

何もないタイルの床に躓き転びかけたところを彼は私の腹に腕を回して助けてくれた。


「……ホント、先輩って危なっかしいですね」

「……うるさいから」


くすくすと可笑しそうに笑う彼に、恥ずかしさで顔に熱がこもる。


もう一度差し出された右手に、私は目を逸らしながら左手を重ねたのだった。

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