介護士は恋をした
「僕には介護、向いてないのかな……」

湊がうつむいて歩いていると、「そんな顔して何かあった?」と声をかけられる。振り向くと同じ階で仕事をしている咲良が心配げな目をしていた。

咲良は先輩たちからは「入所者の人と関わりすぎ」と言われているが、仕事をこなすスピードが早く、それでいて入所者の人から好かれている。そのため、湊が一番羨ましいと感じている先輩だった。

「……何でもないです」

これ以上、ここにいる人と今は関わりたくない。そう思い湊は歩き出そうとする。しかし、咲良に思い切り腕を掴まれた。

「何もないなんて嘘、私には通用しないからね!」

咲良はそう言い、湊の腕を引いて歩いていく。湊が混乱すると「ちょっと話そう」と真剣な顔をして言われた。

湊が連れて行かれたのは、職場の近くにあるコンビニだった。そこで咲良はコーヒーを二つ買って一つを湊に渡す。

「あんな顔してどうしたの?古市くん、あんな顔見せたことないのに……」
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