介護士は恋をした

咲良に訊ねられ、湊は話すしかないと思い途切れ途切れに昼間あった出来事を話す。怒られる覚悟で正直に話した。しかし、湊の話を聞いても咲良は優しい顔のままだ。

「そっか。入所者の人をたくさんお風呂に入れなくちゃいけないって焦っちゃったんだ」

「は、はい。その……嫌がられた時とか、学校で習わなくて、どうしたらいいのかもわからないし、でもお風呂にはたくさんの人を入れなきゃいけないし……」

話を聞いてくれることに安心し、湊は泣きそうになってしまう。その時初めて、入所者の人が咲良を好きになる理由がわかった気がした。

「焦らなくていいんだよ。ゆっくりでいい。みんな人それぞれなんだから。それぞれのペースでいいの。嫌がられたら別の話をしてみたりするのもいいかもね。でも、入所者の人を放っておいちゃダメだよ」

「はい。すみませんでした」

湊が俯くと、咲良は明るい笑顔を見せる。その笑顔を見た瞬間に湊の胸が高鳴った。それは恋の始まりだ。